NASの導入

Synology独自のRAID「SHR」って何?メリットを分かりやすく解説

Synology独自のRAID「SHR」って何?メリットを分かりやすく解説
  • NASを導入したいけど、RAIDについてよく分かからない…
  • SynologyのNASには独自のRAID「SHR」があるって本当?
  • SHRと普通のRAIDの違いを分かりやすく教えて!

NASを導入する際にHDDをどうやって使うのか(RAID構成)を事前に考えておく必要があります。

Synologyには独自のSHR(Synology Hybrid RAID)というRAIDがあり、このSHRについてなんとなくでも知っているかどうかで将来的なNASの使い勝手に大きな影響が出てきます。

この記事では、基本的な「RAIDって何?」というところからSHRについて分かりやすく解説します。

もるっぷる

RAIDについて完全に理解した上でNASの導入を進めることができますよ。

SynologyのNASならRAID構成は「SHR」一択でOK!

  • 普段は、HDD2つだとRAID1、HDD3つ以上だとRAID5と同じ
  • HDDの増設、容量拡張の時にHDDの容量を最大限に活かしてRAID構成してくれる

NASでRAIDを組むメリット

NASでのデータ管理は基本的に2つ以上のHDDを使って「RAID」を組みます。

RAIDを組むことで1つのHDD単体で使用する時より、

  1. データの読み込み・書き込み速度を最大限に発揮できる
  2. 保存されるデータの冗長化できる

というメリットがあります。

もう少し噛み砕いて説明します。

アクセス速度を上げる

2つ以上のHDDにデータを分散して保存すると、アクセス速度を上げる効果があります。

複数のHDDに分散してデータを保存するイメージ

1ヶ所に3つのデータが保存してある場所から1つのデータを取り出すのと、3ヶ所に1つづつデータが保存してある場所から1つのデータを取り出すのとでは、後者の方が早く取り出すことができるイメージです。

もるっぷる

RAID0だとこのメリットを発揮できます。

データの冗長化

2つ以上のHDDに同じデータを2重で保存する使い方だと、データの冗長化がされ、安全性が高まります。

ディスクAが壊れて、ディスクBが正常な状態

「冗長化」という言葉だと難しく感じますが、要は「念の為の予備」を作っておくイメージです。

ディスクAが壊れてもディスクBが生きていれば使い続けることができます。

もるっぷる

RAID1だとこのメリットを発揮できます。

主なRAID構成のイメージ

一般的によく使われるのは「RAID0」「RAID1」「RAID5」です。

この3つを押さえておけばご家庭で利用する分には困らないし、後述する「SHR」についても理解できます。

項目RAID0RAID1RAID5
呼び方ストライピングミラーリングパリティ分散
必要HDD数2つ以上2つ以上3つ以上
使える容量
容量×
HDDの数

容量×
HDDの数÷2

容量×
(HDDの数−1)

6つのデータ[A・B・C・D・E・F]を保存する想定でそれぞでのRAIDイメージを作成しました!

RAID0

RAID0

A・B・C・D・E・FをHDD2つに分散して保存します。

1TBを2つ使っている場合は、2TBを容量に使えることができます。

1TB×2つ=2TB

最もアクセス速度が速くて容量を最大限使えるものの、HDD1台壊れると全データを損失するので、あまりおすすめされないことが多いです。

RAID1

RAID1

A・B・C・D・E・FをHDD1つずつ保存します。

1TBを2つ使っている場合は、1TBを容量に使える計算になります。

1TB×2つ÷2=1TB

2ベイのNASの場合はこの使われ方をおすすめされることが多く、最もポピュラーなRAID構成です。

RAID0に比べてアクセス速度が不利なのと、容量をHDD全体の半分しか使えないのですが、データの安全性は高いです。

HDDが壊れても最後の1つになるまでHDDを使い続けることができます。

RAID5

RAID5

HDD3台以上で構成することができるRAID5は、RAID0とRAID1のいいとこ取りのメリットがあります。

A・B・C・D・E・Fを分散して3台に保存するまではRAID0と変わらないように見えますが、各HDDそれぞれに[P]があります。

[P]はパリティブロックといって訂正補正分を書き込むスペースになっています。

例えば、HDD①が壊れた時に備えて、データAとEを復元させるための符号をHDD②とHDD③の[P]に書き込んでおいてくれるイメージです。

もるっぷる

パリティブロックにHDD1つ分の容量が使われます。

1TBを3つ使っている場合は、2TBを容量に使える計算になります。

1TB×(3つー1)=2TB

※1TBはパリティブロックに使用

HDDが1台壊れても継続利用可能です(2台以上壊れると継続利用不可)。

SHRってどんなRAIDなの?

お待たせしました、Synology独自のRAID「SHR」の登場です。

SHRは自動で効率的な容量の割り当て、将来的な容量の拡張に柔軟に対応してくれるRAID構成です。

普段は、HDD2つの場合→RAID1、HDD3つ以上→RAID5と同じ使い方をしてくれます。

ではSHRにしておくと具体的に何が違ってくるのでしょうか?

結論から言うと以下のような場合にSHRのメリットが発揮されます。

  1. RAID1→RAID5で使うことになった場合
  2. RAID5でHDDを一部交換して容量を増やしたい場合

それぞれ解説します。

RAID1→RAID5で使うことになった場合

HDDを4つ装着できる4ベイのNASで、1TBのHDDを2つ使用中で、2TBのHDDを2つ増設してRAID1→RAID5に変更することになったとします。

RAID1で使用中の4ベイのNASにHDDを2つ増設する

一般的なRAID

一般的なRAIDだと、容量の異なるHDDでRAIDを構成すると、その中で最低容量のHDDの容量に合わせて構成されます。

つまり、2TBを2つ増設してRAID5に変更できても、もともと1TBのHDDでRAIDを構成しているので、容量自体はそれぞれ1TBずつしか使えないのです。

一般的なRAID構成だと2TB分無駄になる

RAID5の計算式[容量×(HDDの数−1)]に当てはめると、1TB×(4つ−1)=3TBで、容量は結果的に1TBしか追加されません。

項目変更前変更後
RAIDRAID1RAID5
容量1TB3TB
もるっぷる

1TB×2つ分が無駄になってしまい、とても非効率ですよね。

SHR

一方SHRだと、先ほどの一般的なRAID構成で無駄になってしまった1TB×2つをRAID1構成に割り当ててくれるのです!

SHRだと余った2TBでRAID1構成を作ってくれる
項目変更前変更後
RAIDSHR
(RAID1)
SHR
(RAID5とRAID1)
容量1TB4TB

2TBを2つ増設するとRAID5として3TB、RAID1として1TBの構成を作ってくれるので、無駄がありません。

RAID5でHDDを交換して容量を増やしたい場合

HDDを4つ装着できる4ベイのNASで、1TBのHDDを4つ使用中で、そのうち2つを6TBのHDDに交換することになったとします。

RAID5で使用中の4ベイのNASのHDDを2つ交換する

一般的なRAID

考え方は先ほどと同様で、一般的なRAIDだと一部のHDDをどんなに容量の大きいものに交換しても、もともと使っているHDDの最低容量以上の容量は使えません。

一般的なRAID構成だと10TB分無駄になる

つまり、HDD2つを6TBに交換しても、容量自体はそれぞれ1TBずつしか使えないどころか、結果的にRAID5として使える容量は3TBのままです。

項目変更前変更後
RAIDRAID5RAID5
容量3TB3TB
もるっぷる

5TB×2つ分が無駄になってしまいます。

この状態で容量を増やすには、HDD全てを1TBより大きい容量のものに交換するしかありません。

SHR

一方SHRだと、先ほどの一般的なRAID構成で無駄になってしまった5TB×2つをRAID1構成に割り当ててくれ、一部のHDDの交換だけで5TBの容量を追加できることになります!

SHRだと余った10TBでRAID1構成を作ってくれる
項目変更前変更後
RAIDSHR
(RAID5)
SHR
(RAID5とRAID1)
容量3TB8TB

つまり、2つのHDDを6TBに交換をするとRAID5として3TB、RAID1として5TBの構成を作ってくれます。

今回例にあげた場合の使える容量の差は5TBでしたが、実際5TBのHDDって数万円はしますよね…。

もるっぷる

SHRにしておくことのコスパの良さはすごいメリットだと思います。

将来的に2ベイモデルから4ベイモデルに買い替える、RAIDタイプの変更の可能性がある場合は、SHRにしておけば上記のようなメリットを発揮できるのでおすすめです。

途中からSHRに変更ができない

初期設定のストレージプール作成(RAIDの設定)時にSHRではなくRAID1やRAID5を選択してしまうと、将来的にRAIDの変更はできても容量を最大限に活かせなくなりますので、ご注意ください。

▼変更できるRAIDの組み合わせは以下の通りになります。

変更前のRAID変更可能なRAID
Basic
※1つのHDDでRAID構成無し
RAID1
RAID5
RAID1RAID5
RAID5RAID6
SHR-1SHR-2

今回説明を省略しましたが、RAID6はHDD4つ以上で構成できるRAID5より冗長性があるRAIDです。

HDDが4つ以上あると、SHRも「SHR-1(RAID5と同じ)」と「SHR-2(RAID6と同じ)」が選択できます。

SHR→RAID1やRAID5→SHRといった変更はできないため、どうしても途中で変更したい場合は、ストレージプール(RAIDの設定)を一度削除して再作成することになります。

参考:≫ RAIDの構成を「SHR」から「RAID 1」へ変更できますか?

まとめ

Synology独自のRAID「SHR」について解説しました。

とりあえず初めから「SHR」にしておけば間違いない

ということがお分かりいただけたかなと思います。

「生涯NASは2ベイモデルのRAID1のみ!」ということだと、SHRのメリットを発揮する機会は無いかもしれませんが、それでも使い道に柔軟性があった方が安心ですよね。

HDDの容量を最大限に効率的に使ってくれるRAID「SHR」で快適なNAS生活を始めましょう!

我が家は2ベイ(HDD2つ)モデルを「SHR」で使っています

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